韓国コンテンツ振興院日本事務所の金泳徳・所長。

 

[スポーツソウルジャパン|安・ビョンチョル記者] 韓国は、2000年代初めから政府の文化体育観光部にコンテンツ産業を振興するための部署を設置して韓流のグローバル化を国家レベルで支援してきた。K-POPをはじめ、ドラマ等放送コンテンツ、K-POPに代表される音楽、アニメーション・キャラクター・漫画、ゲーム、ファッションなど、21世紀の産業として脚光を浴びているコンテンツ分野の普及と、ビジネスの活性化のために政府次元で企画した大規模な戦略事業であった。最近、日本が力を注いでいる「クール・ジャパン」の形と似ているが、韓国は日本より10年以上速く、今の世界的な韓流ブームにも大きく影響した。


また、2009年には「韓国コンテンツ振興院」(KOREA CREATIVE CONTENT AGENCY:KOCCA)という機関が船出した。これまでジャンル別に政府各機関の傘下にあった振興機関を一つに統合したもので、デジタルコンバージェンス時代に合わせ、それに伴う振興体系が何よりも必要だというニーズに応えた形だ。現在KOCCAは韓国コンテンツの企画、創作から制作、流通、人材育成、インフラの提供まで様々な文化・コンテンツ振興事業を通じて、民間企業に大きなビジネスチャンスを提供すると同時に現在の世界的な韓流ブームをソフトランディングさせるための努力を尽くしている。


KOCCA機能の核心は、韓国コンテンツを媒介にした産業人らの中枢ネットワークにある。それぞれの国に韓国のコンテンツや文化事業などを一方的に押し込むことではなく、その国の業界関係者と韓流関係者の間の交流と協力を図ることができるように媒介体としての役割を果たしている。特に日本は、韓流の出発点ということと最大の韓流消費国という特徴でその役目が一層期待されている。
今月1日、<スポーツソウルジャパン>は東京・四谷の韓国コンテンツ振興院(KOCCA)日本事務所を訪れ、金泳徳(キム・ヨンドク)所長に日本事務所の役割と日韓のコンテンツ交流の全般について聞いてみた。

 

韓国コンテンツ振興院日本事務所の金泳徳・所長。

 

-「韓国コンテンツ振興院日本事務所」の歴史と活動について?
KOCCA日本事務所の目的は韓国コンテンツの日本国内の普及で、韓流の持続的な発展のためのサポートが主な仕事。
放送映像産業振興院、ゲーム産業振興院、文化コンテンツ振興院、ソフトウェア振興院、デジタルコンテンツ事業団が2009年5月に韓国コンテンツ振興院の名前で統合された。KOCCA日本事務所は、文化コンテンツ振興院時代の2001年に開設された。文化コンテンツ振興院が韓国コンテンツ振興院に統合された後には、韓国コンテンツ振興院(KOCCA)がその権利と義務を承継している。
KOCCAは、放送映像、K-POP、ゲーム、アニメ・キャラクター・漫画などのコンテンツの普及とビジネスの活性化のため、様々なサポートをしている。KOCCA日本事務所もKOCCAの設立目的と同様で、韓国と日本のコンテンツ関連企業やクリエーターなどの間でかけ橋的な役割を果たしている。ビジネス同士をマッチング、日本進出企業に対するコンサルティング、関連情報の提供など韓国コンテンツを扱う企業人の後方支援機関として機能している。


-サポート事業について具体的に説明すると?
ビジネスマッチングとコンサルティング事業に分かれる。KOCCA日本事務所は韓国KOCCAの連絡事務所的な性格が強いため、独自の事業は多くない。その代わりに韓国本部が日本市場への進出のために展開する様々な事業をサポートする。例えば、韓国でストーリー公募で選ばれた優秀なプロジェクトを対象に日本事務所が日本でショーケースを行い、パートナーやバイヤーネットワーク、投資家等を紹介する。このようなビジネスマッチングの場を開くことが私たちの役割。そのため、日頃コンテンツ業界に携わっている方とのネットワーク作りがとても大事。ハイクォリティーのネットワークがあれば、日本や韓国側からの要求に速やかに適切なバイヤーを探しマッチングすることが可能になる。
ビジネスマッチングと同様にコンサルティングも近年ニーズの高い業務の1つになっている。韓国コンテンツ企業の日本進出が増加するにつれ、日本市場のシステムや文化的面についての知識を求める声も段々高まっている。韓国企業や日本企業などが相手国に対する知識不足で失敗しないようにコンサルティングに力を入れている。


-ドラマを通じて日本で韓流が始まった。今も韓国ドラマが多くの愛を受けているが、所長が思われる韓国ドラマならではの強みとは?
様々な部分で話すことができるが、まずはドラマ制作システムで韓国の強みがあると思う。例えば、ハリウッド映画制作システムの場合には、優れた資金調達能力が特徴。韓国と日本を比べると、韓国の資金調達能力がより豊かだ。日本で一つのドラマを作るためには、放送局からその制作費用の大部分をもらって、制作プロダクションがもらった制作費から10%くらいの利益を取る形が基本。これが日本のドラマ制作システムだとすれば、韓国では放送局からの投資は凡そ50%にとどまるのが特徴だ。残りの50%を外部の投資ファンドや投資家などを通じて調達し、その過程でドラマの規模をさらに大きくする。弾力的な資金調達システムを利用して海外ロケや韓流スターの起用などを行い、劇をより一層おもしろく作っていく。制作費の調達の面では不安な欠点があるが、外部からの弾力的な投資でドラマの質と内容を向上させるビジネスシステムが定着した。また、韓国が持っている儒教精神、表現文化、軍隊文化などが魅力的な文化的背景になり、資金調達構造の弾力性と一緒に韓国ドラマの魅力をより深めている要素として作用されている。


- 韓国ドラマの価格があまりにも高いという指摘もある。
韓国ドラマの価格の問題は、価格を上げた原罪は誰にあるのかという質問につながる。ドラマ制作側の責任もあるが、日本のバイヤーにも責任が大きい。韓国ドラマの価格上昇は、限られた供給者に需要者が殺到したことから始まる。そのような需要過剰の市場が韓国ドラマの価格上昇を誘導した。価格上昇を誘導したり助長したことは、韓国コンテンツのホルダーの責任もあるが、日本の過熱された競争がより根本的な問題だと思う。


- 新大久保のコンテンツ不足が指摘されている。それと関連して、来年に開催が予定された「新大久保ドラマ&映画祭」は鼓舞的に見えるが...
新大久保は、食とショッピングの街として人気を得た。しかし、より多くの多様な魅力を生み出すことができるにもかかわらず、そういうチャンスになかなか巡り合えなかった。それが今の新大久保の危機にも一部影響しているかもしれない。新大久保がより魅力のある町として生まれ変わるためには、文化的な魅力度を高めるための努力が必要。食とショッピング中心の新大久保に新たに文化的コンテンツを提供することによって、韓国の多様な魅力を知ってもらうと同時に新大久保の町おこしにも大きく貢献できると思う。そのような面で、来年3月に開催を予定している「新大久保ドラマ&映画祭」は大きなきっかけになると信じている。KOCCA日本事務所もドラマや映画関係者などを紹介したり、業界の情報を提供したりして、新大久保ドラマ&映画祭の盛り上がりのために協力していく方針だ。


- 日韓関係の悪化以降、日本国内の韓流ファンが多く減ったという意見が聞こえている。
K-POPを中心とした日本国内の韓流ファンの数には、大きな変化はない。しかし、停滞状態に入ったことは確かだ。問題は、世論に敏感なマスコミや大企業、大手イベント会社が萎縮したこと。韓国大統領の独島訪問以後、韓流関連のイベントの宣伝も派手にならないように与論を気にする慎重な傾向が見られる。現在、ロイヤルティーの高い韓流ファンの縮小は確認されていないが、企画やプロモーションの萎縮が続くと、新規ファンの流入に支障が生じることは間違いないと思う。大衆媒体等を通じたプロモーションが厳しいだけに、口コミやネット等小回りのプロモーションで今の局面を乗り越えて少しずつ韓流のさらなる跳躍を準備する必要がある時期だ。

 

韓国コンテンツ振興院日本事務所の金泳徳・所長。

 

- 韓国で日本ドラマのリメイク作が確実に増えている。これを受けて一部では懸念の声を出しているが…
日本ドラマのリメイク作が増えてきた理由は、2011年に韓国でケーブルチャンネル(総合編成チャンネル)が多くできたことが主な原因。ドラマ作家は限られているが、需要が一気に多くなったため、作家の原稿料が急騰した。そのため、選択したブレークスルーの一つが日本ドラマ原作の輸入。これに加え、日本と韓国の情緒が似ていること、作品興行性がある程度保証されることなどが作用してリメイクの割合が増えた。
しかし、韓国では一年で約100本ちかくのドラマが制作される。今年の日本リメイク作は6本ぐらいで、昨年も8本程度。全体の10%にもならない数字なので、今後の推移を見極める必要があるが、輸出対策の一環のうえ、韓国ドラマの受け入れの底辺を広げるプラスにも注目すべきではないかと思う。
文化は、常に外部の変化と有機的に結合しながら変化していかなければならない。デジタルとネットワークを介して世界がますます一つになっている状況で、私たちの文化だけに安住することはもうできなくなっている。その意味で、韓国ドラマのさらなる発展に生かすべきだと思う。


- 日本国内の韓流の展望と韓国のコンテンツの未来は?
コンテンツの供給者の立場からみると、日本はとても魅力的な市場。地理的に近いところに、同じ情緒を持つ巨大な市場が存在すると、コンテンツ制作側は絶えずに進出しようとする努力を怠らない。また、日本には、2003年度以降の10年間、ロイヤルティーの高い韓流ファンがたくさん存在している。流通構造さえよく整えられれば、産業の発展に必要な基本的な要素がすべて揃うことになる。
韓流コンテンツのヒット作によって、市場が上がり下がりを重ねていくことはあるが、供給者の絶え間ない努力、確実なニーズが存在する限り、その魅力的な市場がなくなるわけではない。現在、韓流の状況は厳しいが、長期的な視点で市場の未来は明るい。


- 日本に進出する韓国企業はどのような点を注意しなければならないのか?
韓流のマクロ的な視点を十分に理解し、長期的なビジョンと計画を立てることが何よりも重要。未来の韓流は、単なるビジネスのステップを越え、韓流産業という概念で臨んでいくべきだ。子供の頃からハリウッド映画を見て、死ぬまでハリウッドが好きでいられるハリウッド消費産業のように、韓流も10年間日本人の日常にやっと溶け込んできた。その韓流が20年、30年経過すると、今の韓流とは違う形に発展していく可能性が高い。韓流を掲げて日本進出を目指す企業であれば、このような全体の流れを見て長期的かつ計画的なアプローチが必要。
また、韓国の事業者だけが利益を得るビジネスではなく、日本の事業者にも利益が回るwin-win戦略で市場をさらに大きくする努力も欠かせない。韓流事業の方向性、それに合わせる心構えと覚悟を決めた後、戦略的なビジネス方法を考えるのが第一だ。

 

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