俳優チャ・スンウォンが主演を演じる映画「ハイヒール」が今月3日、韓国で全国公開された。それに先立つ5月23日、<スポーツソウルドットコム>はソウル・三清洞(サムチョンドン)にある某カフェで、チャ・スンウォンとのインタビューを行った。|写真:キム・スルギ記者 |
[スポーツソウルドットコム|ソン・ジヨン記者] 俳優チャ・スンウォン(44)は、“アジョシ(아저씨=おじさん)”だ。彼はパソコンが大の苦手で、スマホよりガラケーがらくちんという。しかし、そんなチャ・スンウォンが多くの女性たちに「変わらぬセクシー男」と呼ばれる理由がある。彼はアバンギャルドなスタイルの洋服が好きで、がっしりしている筋肉質の体、弾力のある皮膚を維持したい“おしゃれな人”だからだ。
映画「ハイヒール」で、トランスジェンダーになりたい刑事 ジウクを演じたチャ・スンウォン。|提供:ロッテエンターテインメント |
“おしゃれ”なチャ・スンウォンが、最新主演映画「ハイヒール」(監督:チャン・ジン、制作:J A N G C H A & Co.、配給:ロッテエンターテインメント)を通じて2年ぶりにスクリーンへ復帰した。古き友人であり映画の演出を務めたチャン・ジン監督とは、同作品を通じて6年ぶりに息を合わせた。ところが、“おしゃれ”なチャ・スンウォンが演じるキャラクターは、なんとトランスジェンダーを夢見る男、ジウクだった。
本当のおしゃれのために女装まで敢行した俳優チャ・スンウォンを、先月23日、ソウル・鍾路区(チョンノグ)三清洞(サムチョンドン)にある某カフェで、<スポーツソウルドットコム>の取材陣が会って、インタビューを行った。映画の公開前に会った彼は、多忙なプロモーション日程と、最近出演中のSBSドラマ「君たちは包囲された」の撮影まで重なって随分疲れ気味だったが、愉快な声で周りをすぐ明るくさせる特有の魅力は以前と変わらなかった。
◆チャ・スンウォンが履いた「ハイヒール」
女性になりたがる男ジウクを演じながら、チャ・スンウォンは俳優人生初めての女装に挑んだ。|キム・スルギ記者 |
6年ぶりに再会したチャン・ジン監督とタッグを組んだ「ハイヒール」は、韓国ではなかなか見られない物語を描いている。表はノワールだが中を覗いてみると、クィアシネマに近い。
「ハイヒール」は、男としての条件をすべて揃えたものの、女性になりたい欲望を隠したまま生きている強力班の刑事ジウクの運命と、その間で起きる残酷な事件を描いた作品だ。
スンウォンはジウクを演じながら女装まで敢行した。筋肉質でマッチョな彼が、赤い口紅を塗ってハイヒールを履き、小指を立てながらコーヒーを飲む姿は、実に衝撃的だった。
「シナリオを初めて読んだ時は“さすがにこれはできない”と思いましたね。でも映画が持っている全体的な意味を真剣に考えました。作品を作るチャン監督に対する信頼があったから、できない理由はないと思ったんです。ただ、深刻な場面でもし観客の方が吹き出してしまったらどうしようって心配したことはありますね(笑)。だから過度にならないように努力しました」
スンウォンは女装のジウクを演じるために、眉毛を整えてアイラッシュも付けた。|映画「ハイヒール」のスチールカット |
彼は完ぺきな女装を試みただけに、アクションシーンにも情熱を燃やした。チャン監督から「お願いだから、ここまでにしようよ」と言われたくらいだったようだ。スンウォンは傘を用いたアクションを撮るために、用意された傘200本を壊しながら“名場面”を誕生させた。
「武術監督とチャン監督が“チャ・スンウォン版アクション”といって、アクションシーンを褒めてくれたんですが、実は僕だけ笑えない理由があるんです(笑)。僕は身長が高いから代役が使えませんでした。だからいろんなアクションを自分でやるしかなかった。じゃどうすればいい?やるからには、とことんやってやろうじゃないか!と覚悟して作ったのが、あのシーンなんです(笑)」
彼と会話したことがある人なら誰もが気付くはず。スンウォンは「男の中の男」だ。中低音の声、タフなゼスチュア、クールな性格は芸能界でよく知られている事実。そんな彼に「女性を隠した男ジウク」について聞いてみた。これまで多様なキャラクターを演じてきた彼に、今作はきっと難しい宿題だったはずだ。
「ジウクというキャラクターは、男なのに女になりたがります。チャ・スンウォンという人はただの男で(笑)。しかし不思議なことに、ジウクには皆が共感できる部分が多くあります。性を離れた“混乱の感情”とも言えるでしょうね。ジウクのことは、自分が望まない人生を生きる人、つまり生まれたままで生きたいのに、世間の目が怖くてそうできない人っていますよね。そういう部分を強調しながら演技しました」
◆40代のチャ・スンウォンが、相変わらずセクシーな理由
スンウォンは自己管理のために、お酒とコーヒーを控えて、お水をたくさん飲むことが習慣だと打ち明けた。|キム・スルギ記者 |
チャ・スンウォンは自分を飾らない人だ。インタビューの終始これをみせながら、豪快に笑ったり、多少刺激的な質問を受けると、目を丸くして怒りながら真剣な表情で答える。仕事とプライベートを適切に維持しながら、愉快な話術と優れたルックスがいっそう魅力的に感じられた理由も、そこにあった。
「僕も昔みたいには行かないですね(笑)。最近は健康のためにお酒を飲まないです。前は夜ふかししながら飲んだり、コーヒーは1日20杯も飲んでいましたが、生活習慣をシンプルに変えました。今はお酒の代わりにお水をたくさん飲みます。頻繁にトイレに行くのが面倒くさいけど、皮膚管理のために一日500mlボトルを20本以上飲んでいます」
チャ・スンウォンは徹底した自己管理で、40代の年齢にも見事なボディラインを維持している。|映画「ハイヒール」のスチールカット |
彼の皮膚管理の秘訣に驚いて親指を立てると、「そんなにびっくりすることですか?」と、またも目を丸くする。
「この年になると、ケアしなければならないです。他のことはどうでもいいですが、服だけは自分が気に入ったものを着たいですよね。僕はアバンギャルドなスタイルが好きだから(笑)。それから、僕の職業は俳優だから自己管理は必須なんです。大衆の方に対する礼儀だと思えば、なおさら緊張しますね。また、本当にステキな男って、ユーモラスでありながらステキな男だと思います。格好つけるだけなら、絶対かっこよく見えない(笑)。だから僕はかっこいいのかな?ハハハ!」
そんな一方で、彼は最近不眠症で苦労していると吐露した。映画のプロモーションやドラマ撮影など、ハードなスケジュールできっと寝不足なはずだが、眠れない理由は他にあった。それはとても几帳面な性格だ。
「台本を完ぺきに覚えないと自分の怒りが収まらなくて眠れないんです。前は台本をもらったら一度読んだだけだったのが、今はドラマやバラエティ番組でも完ぺきに熟知してからやっと眠れるんです。おかげで一日の平均睡眠時間が3時間くらいになりました(苦笑)」
ベテラン俳優のチャ・スンウォンが台本を100%覚えないと眠れないという話に、またも驚いた。インタビューの当日にも彼は、KBS2TVバラエティ「ハッピートゥゲザー3」にゲストとして出演するので、“夜間売店”コーナーのメニューで何がいいのか取材陣にアドバイスを求めて、笑いを誘った。
「演技はすればするほど試行錯誤の経験が重なるものですよね。もっとも大きく感じていることが二つあるんです。一つ目は、役者は現場にいるべき。二つ目は、その現場でいられることに感謝し、徹底的に準備してくること。世の中ただで得られるものはないですから、即興的にして成功できることはないと思います。僕は俳優という職業をすごく愛していますから、今後も長らく現場にいたいです。そのためには僕の年齢とキャリアに合ういい演技をみせなければなりません。方法は一つです。徹底的に準備すること。僕が最近眠れない理由です」