今年3月、東京韓国教育院に就任した南貞順(ナン・ジョンスン)院長。|安・ビョンチョル記者

 

[スポーツソウルジャパン|安・ビョンチョル記者] 東京四谷に位置する東京韓国教育院は、日本国内に韓国文化と韓国語を知らせる電波塔のような場所だ。1966年5月に東京で開院して以来、在日韓国人の民族教育支援事業を中心に日韓両国の友好親善、国際理解教育などに力を注いで来た。最近には、韓国に対する熱い関心を基に韓国語作文大会などのイベントを開催し、韓国人はもちろん、日本人を対象にした韓国語普及事業にも積極的に乗り出している。

 

そんな東京韓国教育院に今年3月、南貞順(ナン・ジョンスン)院長が就任した。開院して約50年の間に女性が院長として就任したのは南院長が最初。初の女性院長の就任ということも話題を呼んだが、就任後の南院長の精力的な活動はより大きな注目を浴びている。
女性とは言え南院長の経歴を見てみると、どんな男性にも劣らない、相応しい資格を持っていることが分かる。日本語を専攻した南院長は、教師出身で、在職中に日本文部省の研修留学生として日本に派遣勤務をした経験がある。この経験を基に韓国で学生を教えたり、日本語教師研究会などを設立したりして日本語教師の資質向上に努力してきた。また、発表会や各種の研究会などでも教育方法に関する良い研究を発表するなど、日本語教育と日本語教師養成にパイオニア的な役割を果たした。東京韓国教育院の院長に就任する前の経歴はより印象的。韓国日本語教育研究会諮問委員、大邱(テグ)日本語教育研究会会長など、日本や教育などと関係の深い席で務めていた。


就任後、南院長が重点を置く事業は、韓国語教育を通じた民族教育、韓国語教師の研修、韓国語作文大会、日本の小・中・高等学校の韓国語採用支援、在日同胞団体の支援など、従来の東京韓国教育院の事業を継続していくことだが、自分の経験をベースにした具体的で積極的な方法論を実践しており、多くの人々を共感させている。
9月27日<スポーツソウルメディアジャパン>は、東京麻布にある東京韓国教育院を訪れ、南院長に直接韓国語普及の意義や民族教育の意味などを聞いてみた。

 

南貞順(ナン・ジョンスン)院長。|安・ビョンチョル記者

 

- 日本内の東京韓国教育院の存在は?
東京韓国教育院では主に在日韓国人の民族教育を担当している。在日韓国人は、他の海外同胞とは異なる。今まで自分の国籍について堂々と打ち明けることができず、明らかにしようともしなかった。その状況で韓国語を学べる機会が多くあったはずがない。それが韓流ブームとともに大きく変わった。自ら韓国人であることを明らかにして、母国語である韓国語を学ぶために韓国語教室のドアをノックしている。東京韓国教育院の最大の目的は、我々同胞が母国の暖かさを感じるように、彼らを迎えることにある。彼らの参加を誘導する積極的な姿勢でこれからも頑張っていきたい。


- 東京韓国教育院の主な事業と目標は?
在日同胞の民族教育を念頭に置いて設立されたのが東京韓国教育院だ。日本という他国に暮らしながら韓国人というアイデンティティを確立するためには、民族教育が何より重要。しかし、決して右派的、保守主義的な方向に偏ってはならない。客観的な視覚を持つグローバルな人材育成が東京韓国教育院の大きな目標の一つであるため、偏った教育観は警戒すべきだと思う。
1980年代から日本に移住した韓国人を称する“ニューカマー”は、自分の子どもたちに韓国語を熱心に教えている。比較的に若い母親たちであるだけに、与えられた環境を適切に活用して日本語と韓国語を同時に教育している。これに対し、民団などを中心にした在日韓国人2,3世たちは韓国語教育が不十分にみえる。彼らのような在日韓国人のために事業や支援策などを増やす必要がある。ドラマや映画を利用した韓国語レッスンはもちろん、歴史教育などのカリキュラムも作って韓国の歴史を在日同胞たちに積極的に知らせる計画だ。
日本の中・高等学校を対象にした韓国語特講も重点事業の一つ。日本は韓国のように韓国語を第2外国語として採択したところが少ない。代わりに学内サークル活動や国際理解総合教育などの選択科目を利用して韓国語の普及に努めている。若いころに韓国に対する正しい知識と偏見のない視点を養うことは、両国関係に重要な役割を果たすと期待している。在日同胞のための韓国語学習が韓国人のアイデンティティの確立のために必要な事業だとすれば、両国の青少年交流を拡大し、韓国について正しく知らせることは両国関係の友好増進という大きな目標のために欠かせない必須コースだと思う。


- 現地の在日韓国人たちの参加度と反応は?
東京韓国教育院は、在外同胞の民族教育に設立目標を置いているため、優先的に在日韓国人を中心にした韓国語教育や歴史教育などに重みを置いて事業を実施してきた。韓流の大人気以来、非常に積極的に韓国語の授業などに参加している姿が見え始めた。ハングル教育に参加する受講生の年齢を見てみると、以前とは異なって20代から80代まで多様な年齢層が確認される。韓国人とはいえ、彼らの国はほとんどが日本だが、祖父母や両親のどちらかが韓国系であることが多く、上の世代であるほど韓国語教育に消極的だった。そんな上の世代が最近非常に積極的に参加し始めたのは、好ましい現像だと思う。


- 日本国内の韓流の影響は?
前述のように韓流の影響は大きい。日本人の韓国語学習者が継続的に増えているということを街のあちこちで確認できる。駅にハングル表記があり、電車の中で韓国語学習本を見ている人がよく見かける。以前暗いイメージのコリアタウン“新大久保”も最近は目覚ましい変身を図り、東京の新しい観光名所として生まれ変わった。韓流のおかげで、韓国語はもはや記号や暗号のような遠い国の文字ではなく、英語のように学びたい言語として日本人の頭に堂々と位置付けた。我々の文字を異国の人が認識して学ぼうとする姿は、驚くべきことに違いない。韓流の形成が韓国を知らせる大きなきっかけになったことは否定できない厳然たる事実だ。

 

南貞順(ナン・ジョンスン)院長。|安・ビョンチョル記者

 

- 韓国語学習に対する需要の増加で、多くの留学生や在日韓国人が韓国語の先生に乗り出している。鼓舞的なことだが、教師の資質問題など最近多くの指摘が提起されている。

韓国語教師の資質に関する指摘は東京韓国教育院も既に把握している。現在、内部で多くの議論を行っているが、韓国語教師のための研修プログラムが充実ではないのは事実。対応できなかった韓国政府や関係機関もある程度の責任があり、これに対するしっかりした対応が必要な時期だ。現在、サイバー教育や短期コースなどで教師養成に力を入れているが、それさえも微弱で準備不足が目に見える。東京韓国教育院は、ハングル教室において韓国語講師関連資格を取得した教員を中心に採用を行っているが、権威のある韓国語教師の資格や正式な国家試験、研修などが用意されないとならない。正確な韓国語と韓国文化を日本人に知らせるためには、今後最も優先させる事業だと考えており、教育院もこれに積極的に参加する方針だ。


- 「全国韓国語作文大会」の意義は?
文化交流を通じて両国の友好増進と関係強化に繋げたいというのが大会の目的だ。作文のテーマを日韓友好にしたのもこのような理由からだ。もちろん韓国語の普及のために進められている事業だが、一般の日本人の参加を誘導することによって文化交流の場として機能されることを願う。
また、東京韓国教育院を広告するための装置として、作文大会を活用している。東京韓国教育院の存在を広く知らせると、東京韓国教育院が推進している事業により多くの韓国語学習者が参加できる。
作文大会を中心とした新しい教育、普及方法も構想している。早ければ今大会から遅ければ次の大会から、東京韓国教育院の韓国語オンライン講座と連携していく計画だ。また、大会の参加者に自分の韓国語実力が確認できるように、本国の韓国とここの日本で韓国語教師ボランティアを募集して、出品された作文の添削指導を実施する。


- 今後の目標
ハングル教室をさらに拡大していきたい。韓国文化に対する日本人の意識変化に応じて、日本社会で生きてきた在日韓国人も韓国語に対する認識が変わった。現在、東京韓国教育院が管轄している28個のハングル教室には、在日韓国人であることを明らかにせず、日本人として生活していた人々が意外に多い。遅く始まっただけに韓国語の勉強に対する生徒の熱意は格別だが、在日韓国人が韓国語に触れることができる場所が多いとは言えない。多くの在日韓国人が手軽に参加できるハングル教室を徐々に増やして韓国人のアイデンティティー確立に貢献していきたい。
また、日本の学校で韓国語が第2外国語として採択されるよう努力を傾けていく。韓国は最も近い隣国だというイメージを日本に形成させるためには、韓国語の普及は絶対に欠かせない事業だ。第2外国語として採用された韓国語授業を通じて韓国に対する正しい認識と知識が積み重ねれば、両国の文化交流拡大と理解増進に大きな足がかりになると思う。

 

 

 

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