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韓国コンテンツ振興院日本ビジネスセンターセンター長の李京垠(イ・キョンウン)氏。 |
韓国コンテンツ振興院は2017年6月、“日韓コンテンツ産業の新たなビジネス発掘における重要な懸け橋”という目標を掲げて日本ビジネスセンターを開館した。日本ビジネスセンターは、日韓コンテンツ業界の従事者が自由に利用できる事務・会議空間「スマートオフィス」と韓国コンテンツの最新トレンドを紹介する「韓流エンタメショールーム」を柱にこれまでの事業をさらに拡張していくことを目指している。特に既存のB2B(法人向け)事業のみならずB2C(一般消費者向け)事業に様々な工夫及び実践を行い、その成果などに注目が集まった。
日本ビジネスセンター開館から約6ヶ月が過ぎた昨年末、韓国コンテンツ振興院・日本ビジネスセンター長の李京垠(イ・キョンウン)氏がBIZ FOCUS JAPANのインタビューに応じ、これまでの成果と今後の計画について聞かせてくれた。
‐2017年6月に開館された日本ビジネスセンターについて説明してください。
韓国コンテンツ振興院は韓国コンテンツを発掘し日本に紹介する事業を2001年からすでに進めてきた。これまでの経験から学んだ事の一つが一般の日本消費者と直接コミュニケーションすることの重要性だった。その一環としての取り組みが日本ビジネスセンター。日本ビジネスセンターではこれまでの事業はもちろん、更なる挑戦の仕組みがあり、特に韓流コンテンツを積極的に紹介するさまざまなイベントを日本ビジネスセンターを通じて推進していくのが新しい事業方向である。
-日本ビジネスセンターの2つの柱である「スマートオフィス」と「韓流エンタメショールーム」について説明してください。
「スマートオフィス」は、例えば韓国から出張にきたコンテンツ業界のビジネスマンが日本で事務作業を行う時、その事務に必要な事務・会議空間を提供する空間である。他国の慣れない環境で仕事的に困った経験をした関係者が意外に多かったため、同事業を考えた。少しでもそういうビジネスマンの便宜を図って不便さを解消し、日韓企業間の業務がスムーズに流れるようにするのが同事業の目的だ。
「韓流エンタメショールーム」は、韓国コンテンツの展示、広報、情報発信などを行う空間だ。韓国のドラマ、映画、K-POPはもちろん、ゲームやVRなどの最新トレンドも韓流エンタメショールームをプラットフォームとして日本の消費者とコンテンツ関連企業に直接紹介するのが目的だ。
‐「韓流エンタメショールーム」では、韓流ファンが直接体験できる体験型コーナーが設置されて関心を集めた。韓流エンターテインメントショールームを訪問した日本人の反応は?
日本の消費者が最も楽しんだコーナーは、最新韓流ドラマやバラエティ番組、音楽番組など韓国の人気コンテンツを背景にした写真の撮影が可能な「撮影コーナー」だ。写真は臨場感あふれる合成写真に仕上げられて、まるでファンの本人が好きなドラマの登場人物になったような気分を味わえる。最近は俳優のイ・ジュンギさんが主演を務めたドラマ「クリミナル・マインド:KOREA」のメインポスターが追加され、多くの日本ファンが訪れている。スケジュールや時間的なことで日本に来るのが難しいスターのファンとしては、地味ながらも嬉しいポイントになっているようで、SNSを中心にファン同士の情報交換も活発だ。
また、「韓流エンタメショールーム」では日韓ビジネスフォーラムなどのイベントの開催も行っている。日韓のコンテンツ企業の関係者らをターゲットにした業界向けの専門的な内容となっており、韓流関連情報の提供はもちろん、業界関係者のコミュニケーション場という機能も果たしている。他にも韓流コンテンツのプロモーションができる空間を企業に提供している。最近は俳優コン・ユ主演の映画「新感染 ファイナル・エクスプレス」を演出したヨン・サンホ監督が訪問し、日本マスコミとのインタビューを行った。
-日本ビジネスセンター開館を機に既存のB2B中心の活動にB2C関連事業が加わったように見える。その理由は?
コンテンツ分野ではB2B事業とB2C事業を分離して考えるのは難しい。特に韓流は、企業への支援や企業間のビジネスマッチングなども重要だが、韓流ファン一人ひとりをターゲットにしたマーケティング活動がとても大事だ。韓流というコンテンツを最終的に消費するのは結局消費者であるファンであり、消費者に直接韓流の魅力をアピールする自体が企業のマーケティング活動にもつながるからだ。日本ビジネスセンターは韓流や韓国コンテンツの情報を日本のファンに案内するアンテナショップ的な機能をまず目指して、最終的にはコンテンツ企業と消費者を同センターを通じて直接つないでいく計画だ。
‐日韓の雰囲気が最近変わったようだ。現場の関係者からはどんな意見なのか?
韓流コンテンツ企業の実務者らの意見をまとめると、徐々に雰囲気が変わっているようだ。一部の関係者からは韓流のピークと言われている2011年の雰囲気と最近の雰囲気が似ているという声も聞こえる。2011年には、K-POP分野では少女時代とKARAが日本でブームを巻き起こし、ドラマでは「美男ですね」の大ヒットをはじめ、さまざまな作品が紹介されて大きな人気を集めた。2017年現在の韓流を説明すると、K-POPでは既存の人気韓国アーティストに加えてTWICEや防弾少年団などのアイドルグループが日本市場を席巻し、ドラマの部分では「太陽の末裔 Love Under The Sun」など多数の作品が注目を集めた。韓流関係の関係者の間では、2011年のような韓流の好調に来年も韓流産業の成長を期待する雰囲気だ。
‐日本で韓流が始まってほぼ20年だが、今の韓流コンテンツの位置付けは?
現在、日本国内の全放送局が1ヵ月で放送する韓国ドラマの本数は約200本になる。メディア露出度が高いのは、アメリカのドラマのように日本人が楽しむ一つのコンテンツとして定着したことを意味する。ただ、日本で韓流が始まってもう15年以上になっているため、日本の消費者もだんだん“新しさ”を要求しているのも事実。こういうニーズにちゃんと対応できるように、より質の高い内容と多様な素材が盛り込まれた作品を作るのが課題だ。K-POPはすでに日本公演文化の大きな柱となっている。海外アーティストの日本公演の中で50%以上はK-POPアーティストが占めており、BIGBANGの場合は嵐を抜いて観客動員数1位を記録した。最近はTWICEの紅白歌合戦への出場が決まり、約6年ぶりの韓国勢の登場に関係者の間では期待が膨らんでいる。防弾少年団の活躍も期待されているため、K-POPは来年がもっと楽しみだ。
‐韓流の課題は?
結論から言うと、“ファン層の拡大”、“韓流の底辺拡大”がこれからの課題だと思う。最近の韓流ファンに対する消費者調査をみると、親世代と子供世代が韓流コンテンツを一緒に楽しんでいることが分かる。韓流コンテンツを利用する日本消費者は10代から50代までの女性で、年齢が若い20~30代はK-POPコンテンツを中心に、第1韓流ブームから韓流コンテンツに接した40~50代はドラマ・コンテンツを中心に楽しんでいるという。つまり、母は韓国ドラマのファンで、娘はK-POPにはまっていることになる。広い年齢層から支持を受けているのは肯定的な要素だが、その支持層に男性が占める比率が低い点は改善しなければならない。「どうすれば韓流ファン層を男性にまで拡大していくのか」、「そこで日韓協同による新しいビジネスチャンスはないのか」ということが今の韓流に与えられた課題だ。
‐2018年度の目標は?
2017年は基礎を固めたとしたら、2018年は日本ビジネスセンターを通じて積極的に事業を展開していく計画だ。企業らと連携して韓流情報ニュースを直接中継するなど、より多くのプラットフォームを作り出して日本ビジネスセンターを日本消費者に知らせたい。また、韓国コンテンツと日本企業のマッチング・ゾーンとしての役割も拡大していき、より多くの企業らが活躍できるような環境を作りたい。