写真:MAXIM Korea |
先日もお届けしたメンズマガジン<MAXIM>韓国版の回収事件。前回は編集者目線で捉えた回収事件についてお話ししたが、今回は、日韓の“性描写”に対する捉え方の違いについてお話ししたい。
今回、<MAXIM>が回収された理由は、「性犯罪を助長する」という世論の声が背景にあるが、日本でもこの事件に似た回収騒動が一昔前あったことを思い出した。それは2013年1月に講談社で発行する漫画雑誌『ヤングマガジン』が回収された事件だ。当時、AKBに在籍していた河西智美の写真集の告知用である“手ぶらヌード”写真を掲載したのだが、発売直前になって上層部が写真を問題視し、緊急回収となったのだ。流通は食い止められたが、雑誌は製本され、印刷代や編集製作費など含め損害は3億円に上ったとも言われている。
しかし、事前告知の写真がすでにWEBメディアに配信され、「児童ポルノに該当するのでは?」とネットを中心に大炎上を起こした。もちろん、写真集も発売中止に至り、立件はされなかったものの、警察が発売元の講談社を捜査するまでに至ったのだ。
何がそんなに問題になったのだろうか。こちら単なる“手ぶらヌード”ではなく、河西の胸を背後から男児の手が覆い隠している写真であり、昨今、厳罰化が進んでいる“児童ポルノ”に該当する恐れがあったためと言われている。
この双方の回収事件の理由は、拘束された女性と児童手ぶらヌード。どちらも性描写であり、性犯罪を助長するものだが、異なる点は“児童ポルノ”であるか、“性暴力”であるかだ。
日本は先進国の中で、児童ポルノ厳罰化に圧倒的な後れを取る後発国。一方、韓国での年間の強姦摘発件数は日本の40倍と言われており、犯行内容も口では言い表せないほど残虐なものが多い。児童ポルノが蔓延している日本と性暴力が後を絶たない韓国。
これらのことからわかるように、結果的にだが、双方、国家が恥部とする性に対する嗜好を表現してしまった。両国、自国が一番取り締まらなければいけない性犯罪に対する、“性描写”を描いてしまったため、大炎上を起こしたのである。
一番国民がナイーブで触れてはいけないゾーン。一昔前であれば、「アートです」で言い訳が通ったのだろうが、今後、益々、表現の自由に制限がかかり、出版社にとってみれば、厳しい世の中になりそうだ。
THE FACT JAPAN|中西美穂
「週刊女性」、「週刊文春」の編集・記者を経てフリーライターに。専門は韓流。大学卒業後、韓国の高麗大学付属語学堂へ留学し、韓国の魅力にはまる。著書「プチ韓国新大久保完全ブック」。