男寺党の新しい頭領、李淳雨(イ・スンウ)を演じるチャン・スンウォン|撮影:小川典子

 

[スポーツソウルジャパン|小川典子記者] SMAPの草彅剛が主演を務める舞台「ぼくに炎の戦車を –Bring me my chariot of fire-」が、11月3日に上演初日を迎え、報道陣を対象にした、囲み会見と公開リハーサルの機会が設けられた。

この作品は、2008年に上演され紀伊国屋演劇賞をはじめとする演劇賞を総なめにした「焼肉ドラゴン」を手掛けた、鄭 義信(チョン・ウィシン)による作・演出によるものであり、約100年前の朝鮮・京城(現在のソウル)を舞台に、厳しい時代をたくましく生きる伝統芸能集団、男寺党(ナムサダン)と市民、そして彼らと出会う日本人たちの姿を描いた人間ドラマである。

草彅が演じるのは、韓国の文化や民芸白磁を心から愛する青年教師、柳原直輝。実在の人物、柳宗悦(やなぎむねよし)をモデルにしている。直輝の妹、松代には広末涼子、その夫、大村清彦に香川照之という実力派たちが顔をそろえ、さらには、男寺党の新しい頭領、李淳雨(イ・スンウ)を、チャ・スンウォンが演じるなど、日韓を代表する俳優のキャスティングが、多くの話題を呼んでいる。なお、劇中、草彅や香川は、韓国語によるセリフを披露し、スンウォンは綱渡りに挑戦するなど、見どころがたくさんの作品である。

 

和服姿の広末涼子。絶大な人気を誇る韓国でも公演が予定されている。|撮影:小川典子

 

囲み会見には、草彅、スンウォン、広末、香川の4人が出席。それぞれの上演にあたっての意気込みや作品についての思いを聞くことができた。豪華なキャストの登場に、場内はたくさんのフラッシュの光が瞬いた。まずはフォトセッションからスタート。それぞれの舞台衣装に身をまとった姿に、本番を迎えた緊張感と期待感が伝わってくる。スンウォンも、ほかのキャストとともに次々と各社のシャッターに応じる中、「笑顔ください!」と、あるカメラマンのリクエストに、「僕、今、笑ってるよ!」と答えてみせ、笑いを誘っていた。ここからは質疑応答へ。


 

Q:今月公開の映画『任侠ヘルパー』とはガラリと違うイメージですね。
草彅:(うなずきながら笑みを浮かべ)そうですね。時代も違うので、今回は学校の先生なので、エリートというか、頭の良さそうな…というより、頭がいいんですけどね(笑) そういう役です!

 

Q:今回、また新しいことにチャレンジをしましたが…。
草彅:はい。こんなにしっかりと韓国の俳優の方と一緒に演技をしたことがなかったので、とても刺激的に毎日を過ごしています。

 

Q:以前からスンウォンさんとはお知り合いですか?
草彅:そうなんですよ。番組でも対談したことがありまして、5年ぐらい前に。その時から、すごく気になっていた方なので、今回、共演することができてすごくうれしく思っています。

 

Q:どんなところが、気になっていたんですか?
草彅:いやもう、ただただかっこいいんで…。お芝居がすごく好きなんですよ、スンウォンさんの。
スンウォン:(日本語で)ありがとうございます!(場内は爆笑)
草彅:今回の舞台では、僕とスンウォンさんは友情が、香川さんと広末さんは親子の絆がテーマになっています。マスコミの方もこんなにたくさん集まってくれて…。今日は初日なので、“いっぱい、いっぱい”の気持ちになっていますね。

 

Q:それは“セリフ”がですか(笑)?
草彅:あぁ、もう、いっぱい、いっぱいですね(笑) 韓国語のセリフもありますし…。頭の中がこんがらがっているんですけれど…でも、なんか上手くいくと思います!幕が開いちゃえば、もうね…(笑)

 

Q:草彅さんの印象はどうでしたか?
スンウォン:インタビューをするためにソウルに来たんですが…。
(と、すべてのコメントが終わった後)
草彅:あの、5年前に会ったことがあるんですが…(韓国語が得意な草彅が、通訳より先に伝えようとする姿に大きく沸く会見場。その後も続けてしまう…) 僕の印象は誠実で…すごく日本のビッグスターということが分かったと!1か月の稽古期間でも、そんな僕の印象は変わらず、ホントの意味でいい友情関係が築けると…って言いましたよね(笑)?
(その間、広末は“うわ~、すごい~”といった表情で聞いており、香川もうなずきながら、笑っている)
スンウォン:(日本語で)すごい!すごい!
草彅&スンウォンがハイタッチをし、拍手が沸いた。

 

Q:稽古の間にも草彅さんが通訳に?
草彅:さすがにお芝居になると難しいので、通訳さんにちゃんとお願いしていました。

 

Q:お芝居だけでなく、実際にも“兄弟の契り”ですか?
草彅:そうですね!“ホントの友情”が大事なので、舞台でそれを叶えることによって、観に来てくれるお客さんにも、すごく伝わることがたくさんあると思いますので…。今日からスタートする公演の1か月、しっかり友情を高めて、がんばりたいなと思います。

 

Q:具体的にも、友情を感じることは?
草彅:たくさんあります!それは観ていただけると分かると思うんですけれど、気持ちが本当に深く熱くぶつかり合うというか…。そういうシーンがホントにあるので、想像以上に良い舞台になっていると思います、僕は。

 

Q:この作品を通じてあらためて韓国の魅力を?
草彅:“ともに生きていく”ということの大切さを知りました。それはいつの時代も同じなのですが、気持ちが通じ合えることはすごくうれしいことで、大事なことなんだなと思いました。
香川:韓国の俳優さんたちは、心も体もやはりパワーがあって…。稽古の時も、日本人の俳優たちが、引っ張っていってもらったという1か月でした。チャ・スンウォン氏はとくに、心がきれいで…。はじめてお芝居を拝見しましたけれど、僕は韓国語が分からないけど、チャさんの言葉のトーンに涙が出てくる。それはきっといろんな苦労があったと、いろいろな想いをされてきたと、そういうことがわずか一言のセリフで分かる、そのまま映し出すことができるピュアな心を、チャさんをはじめ、韓国人の俳優さんが全員持っていらっしゃる。これは、とても信頼できることですね。
スンウォン:(感動し日本語で)お兄さん…。
広末:わたしも本当に国とか国境とか国籍とか、そういうことじゃなくて、同じ時代に、同じ土地で生きてきた人。もちろん時代に翻弄されて、いろんな歴史があると思うんだけれど…。そこで生まれた、愛情、友情、命の尊さ…そういうものを感じ取っていただければ…。それは世界共通のことかなと、この作品を通してあらためて感じました。

 

Q:香川さんも韓国語に挑戦?
香川:さきほどから草彅くんが、いろいろ話していますが、僕はそんなんじゃないのに、半分以上も韓国語で話さなくてはいけないという、どんなムチャぶりなんだと…(笑)本当に大変です…。お芝居で韓国語をしゃべるっていう、この生で、人の前でしゃべるっていうのもとても恥ずかしいですし、厳しいですね。先ほども申しましたように、韓国人の俳優さんたちや通訳の方、いろいろな方々にご協力いただいて、なんとかやっていけるかなと…足手まといにならないように…。
草彅:がんばりましょう!
香川:がんばるしかない!発音の良し悪しまでは聞かないでくださいね(笑)!
草彅:カンペキです、香川さん!
香川:そんなことないですよ、とっても難しい…。
草彅:すごいですよ、香川さん!広末さんも、家族の物語があるんですが、舞台上で親子げんかをする場面があるんですが、ホントにすごいシーンで…。観ていて毎回、毎回、感動して、僕もがんばろうと思えるんです!香川さんは…、毎朝、稽古場に行くと、汗だくの香川さんがいらっしゃって…。朝の8時や9時に、すごい汗だくなんですよ!いつも僕なんかは、「眠いな~」と思って入っているのに、もうその時点で、汗がダラダラなんです(笑)!

 

Q:それは、汗と涙ですか?
香川:この舞台は、全部で15幕あるんですけれど、13幕に僕がその汗だくになりそうなシーンがあって…。14幕でチャ・スンウォン氏には、大変なシーンがあるんですね。それを受けて15幕は草彅さんが、膨大な名ゼリフでバシっと締めるという、この“3つの流れ”が、もう、ひとつの“タスキ”なので、どうそのバトンを僕は渡していくかと…。これには、広末さんの力もいただきながら、僕たち一丸となってやっていくしかないなと…。

 

Q:劇中は曲芸を披露されるとか?
スンウォン:そうなんですよ。僕は綱渡りに挑戦するんですが、通常は1年ぐらいのトレーニングが必要なところを、今回は1か月くらいに集中して練習しました。指導された清水さんが非常に熱心に教えてくれました。本番ではどうなるか分かりませんが、このお芝居の中では非常に重要なシーンですで、たとえ失敗したとしても、ベストを尽くしたいと思っています!実は、毎晩、夢の中で綱渡りをするシーンが出てくるんです。昨日も見ました…。僕がこれを挑戦することによって、感動的な何かを伝えられたらと思っています。ぜひ期待してください!
香川:何だかんだ言って、我々は“芝居”なわけなんです。でも、この14幕でスンウォンさんがやることは、本当に芝居ではないリアルなものを突き抜けた瞬間です!僕たちが見ていても、無条件に圧倒されます。本当に、毎日稽古されていますもんね。

 

Q:公演中、草彅さんに期待するものはありますか?
スンウォン:草彅さんと…(と、韓国語でコメントをした後、またもや草彅自身が伝えることに!)
草:あー、あの~(場内爆笑)!稽古の初日に食事したんですよ、みんなで。焼肉食べに行って。それで、5日前くらいに、今度は2人で食事に行ったんですよ。それも韓国料理屋さん。“ナクチ”っていう生きたままタコをぶつ切りにしたのがあるんですが、“すごく元気が出る!”ってスンウォンさんが教えてくれて。なので、公演が始まっても、1週間に2回はナクチを食べに行こう!って、誘われました(笑)!

 

Q:約束できそうですか?
草彅:はい、そうですね!
スンウォン:草彅さんをふくめて、日本の俳優やスタッフのみなさん、韓国の俳優ももちろんですが、いろんな方々が“伝えるもの”を教えてくださっています。この関係を長く続けていけたらいいなと思っています。

 

Q:最後にメッセージを
草彅:今日から「ぼくに炎の戦車を」が、赤坂ACTシアターで公演が始まります。とても心に伝わる舞台になっています。観に来てくれた方は、“明日から元気にがんばろう!”という気持ちになると思います。ぜひともこの舞台を、よろしくお願いします!

 

男寺党の衣装を身にまといスラっとした出で立ちが映える!|撮影:小川典子

 

最後の草彅の言葉に、ほかの3人もうなずき、舞台を通じて心を一つにしている様子が見て取れた。報道陣の激励の拍手に、草彅自身も「ありがとうございます、がんばります!」と前向きな姿勢で、会見場を後にした。


【Information】
舞台「ぼくらに炎の戦車を –Bring me my chariot of fire-」
作・演出:鄭 義信
出演:草彅剛、チャ・スンウォン、広末涼子、香川照之ほか

○東京公演
2012年11月3日(土)~2012年12月1日(土)
会場:赤坂ACTシアター
○大阪公演
2012年12月8日(土)~11日(火)
会場:梅田芸術劇場 メインホール
東京・大阪ともに日本語字幕付
○韓国公演、2013年1月末、国立劇場(ソウル)にて上演予定
 

 

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