POPERAの第一人者であり、韓国が誇る国民的なテノール歌手であるイム・ヒョンジュ。|Photo By Yuki Kuroyagani

 

[スポーツソウルメディアジャパン|小川典子記者] オペラとポップスを融合させたポペラのジャンルで知られる、韓国を代表するテノール歌手、イム・ヒョンジュが、10月30日、東京・大井町のきゅりあんにて、小編成オーケストラバラダンと共演、日本で初めての単独公演を実現させた。公演は、バラダンによる「あなたが選ぶ“韓流ドラマテーマ ベスト10”」と、イム・ヒョンジュによるオンステージという2部形式で行われ、集まった観客はバラエティに富んだ楽曲に魅了されていた。


バラダンは、ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、オーボエ、パーカッションの合計8名で構成された、いわば‘小さなオーケストラ’。これまで、韓国ドラマのOSTを担当したアーテイストたちと数々のコラボレーションを実現させ、成功に導いている。第1部は、この日の観客を中心にした人気投票ベスト30から上位10曲をセレクト。‘太王四神記’から‘天国の階段’といった幅広いジャンルの作品から、名場面を彩った楽曲たちがラインナップされていた。5位にランクインした‘宮廷女官 チャングムの誓い’の‘フェブガ’では、韓国の伝統打楽器であるジャングを使用した、その鮮やかなパフォーマンスに大きな拍手がわいた。1位を獲得したのは、やはり‘冬のソナタ’の‘最初から今まで’。おなじみのイントロに、感慨深く聴き入る観客の姿があった。バラダンのクラシカルな編成であるが、楽曲ごとに音色を変化させながら、物語の世界観を表現するそのアレンジに、韓国の音楽文化の奥深さを感じることができた。 

 

韓国が誇る国民的なテノール歌手であるイム・ヒョンジュ。|Photo By Yuki Kuroyagani

 

そして、いよいよ第2部のスタート。バラダンによる華麗な序曲の演奏に迎えられ、ヒョンジュがさっそうとステージに登場!客席から大きな歓声と拍手が贈られた。序曲に合わせてフレーズを操るだけで、一気に会場が華やかな雰囲気に包まれた。彼が持つ、“歌の力”を物語っている。そしてミュージカル‘キャッツ’から‘メモリー’を披露。客席一人ひとりに語りかけるように、しっとりと歌い上げた。まずは「イム・ヒョンジュです。日本で初めてのソロコンサートにようこそ!」と日本語で観客にあいさつ。引き続き、韓国語と英語で感謝の気持ちを述べ、グローバルな活動を続ける彼ならではのMCがその後も続いた。‘You Raise Me Up’‘ネッラ・ファンタジア’と、2曲続けた後、ヒョンジュから「次はとても有名な作品です。皆さんも曲を聴いたら、お分かりになると思います」という紹介で、歌劇‘蝶々夫人’から‘ある晴れた日に’を披露した。


衣装を変えマントを羽織り、ふたたび登場したヒョンジュ。オペラ‘愛の妙薬’から‘人知れぬ涙’では、切なくも純粋な恋の物語を表現した。「僕の大好きなクラシックソングはいかがでしたか?」と問いかけると、観客から大きな歓声が沸いた。「次はみなさんの大好きな、韓国ドラマのOSTからのナンバーです。聴いてください!」という紹介に続いて、ドラマ‘快傑春香’から‘幸せになってほしい’を披露。ミディアムテンポに乗せた、伸びやかな美しい声にうっとりとする観客。高らかに歌い上げたラストのフレーズには拍手喝采の渦となり、思わずヒョンジュ自身も片手でガッツポーズをしてみせた。「この曲、知っていましたか?」と優しく語りかける。2004年のドラマ放送時には、音楽配信サイトでのダウンロードが100万件を記録し、大ヒットになった。

 

イム・ヒョンジュが素晴らしい歌声を披露している。|Photo By Yuki Kuroyagani


「僕は現代もののドラマよりも、時代劇への参加が多いですね」というコメントの後には、オ・マンソク主演の‘王と私’から‘どうか’を披露。この曲は、ヒョンジュ自身が作詞を手掛けたもの。「歌うことももちろんですが、僕は文章を書くことが好きなので、評論家やエッセイストとしても活動しています」と胸を張った。「作品とともに音楽も愛されたドラマです」という紹介で、イ・ソジン主演の‘階伯(ケベク)’のエンディングテーマ‘一歩だけ’へ。壮大なバラダンの演奏に合わせた、ヒョンジュのダイナミックなボーカルが印象的である。「この歌は、本当に悲しいです…」と、表現者としての心情も明かされた。そして最後は‘トンイ’から‘愛別離’。8分の6拍子のリズムに合わせ、宮中舞踊のように、ゆっくり手を踊らせる仕草は、歌声同様に妖艶なものであった。

 

韓服姿で登場したイム・ヒョンジュ。|Photo By Yuki Kuroyagani

 

まもなく会場はスタンディングオベーションとなり、アンコールが沸き起こった。熱烈な歓声に応えて、ヒョンジュが、パジチョゴリをまといステージに戻ってきた。ピアノの調べにチェロの音色がゆったりと重なるイントロが印象的な、彼の代表曲‘Misty Moon’が流れる。夜の濡れる月を思わせる歌声に聴き入る観客。これを作曲した松本俊明氏が会場に駆けつけていた。客電が明るくなり、客席にいる松本氏をヒョンジュが紹介した。友人である歌手、平原綾香の姿も見られ、トップシンガーの存在に騒然とする客席に「さぁ僕に注目してください!」と自ら笑いを誘う場面も。‘Friends Of Love The Earth’の活動以来、親交を深めている、松任谷正隆、由美夫妻は、残念ながらスケジュールの関係で来場することは叶わなかったが、「実は昨日、お会いしました!」と、とてもうれしそうな表情を見せていた。しかしながら、集まった観客に「何よりも、皆さんが大切なVIPです」と感謝の想いを伝え、さらに拍手の輪が広がった。韓国からオフィシャルファンクラブの会員も駆けつけていたことが、ヒョンジュ自身から日本のファンへ紹介された。そんなことからも、彼の温かい人柄を感じることができる一幕でもあった。最後の曲に‘イムジン河’を残し、ヒョンジュは「みなさん、本当にありがとうございました!」と大きく手を振り、惜しまれつつも会場を後にした。公演後はアルバム購入者を対象にしたサイン会も開かれ、一人ひとりのファンとの交流の場が設けられた。

 

アンコールのリクエストに「Misty Moon」を披露しているイム・ヒョンジュ。|Photo By Yuki Kuroyagani

 

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