ドラマ「ハイド・ジキル、私」」で主演を務めているヒョンビン。しかし予想とは違って、視聴率不振が続いている。|ドラマ「ハイド・ジキル、私」の公式フェイスブック |
新しい靴を履いて気持ちよく出かけたが、靴擦れによる水ぶくれで片足を引きずった経験は誰もが一度はある。履きなれるまでの時間と苦労が足りないと、痛い目になるのが新しい靴というもの。しかし、履きなれるまでの忍耐の時間を耐え切ったら、その「新しいもの」は知らぬ間に「自分のもの」となる。
「変化」は、新しさを自分のものにさせるメリットを与えるが、その分、苦味を飲み込む忍耐の時間が必要だ。その苦労が嫌いだとして履きなれた古い靴だけに執着すると、靴には穴が生じ、流行に沿うどころか足の健康まで心配することになる。
今の俳優ヒョンビン(32・本名:キム・テピョン)の姿を見ていると、まさに古靴だけに執着しているようだ。
多様な作品を通じて“トップスター仲間入り”を果たした俳優ヒョンビン。|KBS、MBC、SBS |
ヒョンビンは韓国を代表するトップスターだ。2005年に放送されたドラマ「私の名前はキム・サムスン」を介して国内はもちろん、アジア全域で高い人気を得た。以来、出演したドラマ「雪の女王」(2006年)、「彼らが生きる世界」(2008年)、「シークレットガーデン」(2010年)まで相次いでヒットさせ、不動の地位を築き上げたかのように見えた。
しかし、そんなトップスターも韓国の男なら宿命である“国防の義務”は避けることができなかった。ヒョンビンは2011年、海兵隊1137期として入隊し、2年近くファンたちのそばを離れた。問題は、ヒョンビンが除隊してからだ。
除隊後の復帰作に選択した映画「王の涙-イ・サンの決断-」。日本円で約12億円が投入された超大作だったが、損益分岐点をやっと超える屈辱的なスコア(累積観客384万9435人)を記録した。一部のメディアからは、“王の帰還”とされたヒョンビンの花道に「異常が生じ始めた」とも報じられた。
昨年公開された映画「王の涙-イ・サンの決断-」。華麗なキャストで話題を集めたが、期待ほどの観客を動員せずに幕を閉じた。|映画ポスター |
茨の道は続いた。ヒョンビンの出演で放送前から話題を呼んだ水木ドラマ「ハイド・ジキル、私」は現在、同時間帯のドラマの中で最下位を記録している。先週放送分(5日)の視聴率(ニールセン・コリア)で「ハイド・ジキル、私」の全国視聴率は5.3%。1位の「キルミーヒールミー」(11%)とは2倍ぐらいの差だ。
ヒョンビンは、キャリアが不足する俳優でもないし、スター性が足りないわけでもない。本人と似合わない作品を選択したミスも犯していない。彼の復帰作「王の涙-イ・サンの決断-」は、ドラマ「チェオクの剣」「ベートーベン・ウィルス~愛と情熱のシンフォニー~」などを演出したイ・ジェギュ監督のスクリーンデビュー作で、ドラマ「ハイド・ジキル、私」も、「大切に育てた娘 ハナ」と「野王」を演出したチョ・ヨングァン監督と、「清潭洞アリス」を執筆したキム・ジウン脚本家が一緒にした力量のある作品だ。
「ハイド・ジキル、私」でク・ソジン役を演じるヒョンビン。これまで見せた“冷たい男”と大きく変わらない。|SBS |
多数の芸能関係者は最大の問題として、ヒョンビンが切り出すカードを大衆が既に見抜いていることを指摘する。つまり、透明な包装紙に包まれたギフトのようなものだ。多くの作品で様々な役を演じたヒョンビンだが、「冷たいけど、自分の女には優しい男」あるいは「白馬に乗った王子様」という枠から離れたことがない。
「ハイド・ジキル、私」も、彼の成功作「シークレットガーデン」と「私の名前はキム・サムスン」で見せたキャラクターと大きいな違いはない。その一方、彼と競合する「キルミーヒールミー」のチソンは、破格の連続を見せている。同ドラマでチソンは、今までのジェントルなイメージを脱いで、女子高校生のセラ服まで着こなしている。
新しいことには、常に恐れが先に訪れる。失うものが多い人にはなおさらである。それにもかかわらずヒョンビンには、これまで築いてきたキャリアを踏み台にして「変化」という新しい靴を履く必要がある。たとえ履きなれない新しい靴で足が血まみれになっても、その傷は彼の新しい跳躍に繋がる。それが、多くのファンが今の彼を見守っている理由だ。
THE FACT|ソン・ジヨン記者